俳句、来るべきもの(五毒門)

今日ありと思ふ余命の冬桜 中村苑子

 

[#地から1字上げ](生きながら一つに氷る海鼠かな――芭蕉

 

憲法二条は、「皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する」と定めています。

 

憲法下の皇室典範は皇室が自律的に定める規範であって、帝国議会の議を経ることを要しないものとされていました。

 

皇位の継承について一般国民および議会の干渉を許さないとする趣旨のものです。

 

憲法下の皇室典範は法律の一種であり、国会の議決によって修正されます。

 

[#地から1字上げ](皇位の継承、四一頁)

[#地から1字上げ](第3講 天皇制)

[#地から1字上げ](長谷部恭男、憲法講話、有斐閣社、2020年)

 

現在の皇室典範は一条で「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」と定めています。女系や女子に皇位の継承を認めないことが男女平等に反するという見方もありますが、皇室が身分制の「飛び地」の中にあるという見方からすれば、国民一般に妥当する男女平等原則はこの際、関係がありません。もっぱら国の象徴としての皇位が安定的に継承されていくことができるかという点から、その当否が検討されるべきだということになるでしょう。

 

[#地から1字上げ](皇位の継承、四二頁)

[#地から1字上げ](第3講 天皇制)

[#地から1字上げ](長谷部恭男、憲法講話、有斐閣社、2020年)

 

A 親しむ

B 対話する

C 解体する

D ダイモーンの声を聞く

 

[#地から1字上げ](新しい新党わさおのお話)

[#地から1字上げ](押ささる・令和の奥羽列藩同盟)

[#地から1字上げ](ぼくはすずちゃんと三重県で子作りします)

 

第1条 天皇を日本の象徴とし、また日本国民の統一体の象徴とする。さらに、主権は日本国民にあり、天皇の地位は、日本国民の意志に基づいて定められなければならない。

 

[#地から1字上げ](英語版の意訳)

[#地から1字上げ](英語版で読む日本人の知らない日本国憲法カドカワ、2016年)

 

明治憲法(つまり大日本帝国憲法)では、天皇は主権者でした。しかし日本国憲法では、天皇は主権者ではなく象徴になり、その代わりに私たち日本国民が主権者になりました。

 

[#地から1字上げ](条文理解のポイント、五八頁)

[#地から1字上げ](英語版で読む日本人の知らない日本国憲法カドカワ、2016年)

 

さて、天皇が日本の象徴(シンボル)だということですがイメージできるでしょうか。平和のシンボルがハトであるように日本のシンボルが天皇だということですが、わかるようでわかりません(普通に考えれば、日本のシンボルといえば「日の丸」です)。

 

[#地から1字上げ](条文理解のポイント、五八頁)

[#地から1字上げ](英語版で読む日本人の知らない日本国憲法カドカワ、2016年)

 

また、天皇は日本国民の統一体のシンボルであるとのことですが、これもわかるようでわかりません。日本人ひとりひとりが細胞で、1億2000万の細胞としての日本人が集まって「日本」という個体ができ、その個体としての「日本」のシンボルが天皇だということでしょうか。よくわかりません。憲法第1条は非常に抽象的で形而上学的です。ちなみに、「シンボル」は「代表」ではありません。よって、天皇は日本を代表してはいません。同じように、首相も日本を代表していません。つまり、日本には国家元首というものがないのです。日本国憲法では国家元首が誰になるか明記されていないのです(大日本帝国憲法では第4条で天皇国家元首だと明記されています)。

 

[#地から1字上げ](条文理解のポイント、五八頁)

[#地から1字上げ](英語版で読む日本人の知らない日本国憲法カドカワ、2016年)

 

参考までにいっておきますと、マッカーサー・ノートでは最初に、

 

Emperor is at the head of the state.

天皇は国家の最上位にある。)

 

と書かれています。Emperor is the head of the state でもなければ Emperor is the symbole of the state でもないのです。

 

[#地から1字上げ](条文理解のポイント、五九頁)

[#地から1字上げ](英語版で読む日本人の知らない日本国憲法カドカワ、2016年)

 

さて、天皇ですが、天皇は西欧の皇帝とはその成り立ちや役割を考えてもまったく異なります。その意味でも「天皇」の訳として emperor(皇帝)はふさわしくありません。だからといって他にいい訳があるわけでもないのですが。「天皇」は「天皇」で「天皇」以外の何者でもありません。天皇はこの世で唯一無二のものです。蛇足ですが、日本国憲法では「この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」となっていますが、これまで一度も天皇の位置づけについて国民の総意を得たことはないでしょう。

 

[#地から1字上げ](条文理解のポイント、五九頁)

[#地から1字上げ](英語版で読む日本人の知らない日本国憲法カドカワ、2016年)

 

地球に来た目的は?

これを聞くのよね?

そうだ

そのために

質問とは何かを教える

知りたい情報があり

答えてほしいのだと

 

[#地から1字上げ](映画・メッセージ、Arrival)

 

あなたのお気持ちは僕なりにわかります。この世界に生きていればつらいことや切ないことはたくさんあります。いつまでたっても解決しないこともあり、それどころか時間の経過とともにますます悪化していくこともたくさんあります。でも優れた本を読んだり、良い音楽を聴いたり、面白い映画を見たりすると、そのあいだちょっとほっとすることができます。あとになってもその記憶や感触が残っていて、それで心を温めることもできます。世間の多くの人々がそうやって、ちょっとずつ暖をとりながら生きているのだと思いますよ。

 

しかし僕は決して、きつい現実の世界から逃避するために小説を書いているわけではありません。僕としてはむしろそういうものに立ち向かうために書いているような気がします。というか、それに立ち向かう自分なりのエネルギーを獲得するために、物語を書いているような気がします。物語の世界にはたしかにそういう「何か特別なもの」が潜んでいるような気がするのです。

 

それから僕について、あるいは僕の作品について書かれた本のことは、あまり気にしなくてもいいです。僕の書く小説は、それだけで完結するように書かれています。それでオーケーという仕組みになっています。だから気楽に読んでください。たとえばあなたがおいしいコロッケを食べて、おいしいなあと思ったら、そのコロッケのおいしさについて誰かにいちいち説明してもらう必要はありませんよね? それと同じことです。がんばってください。

 

[#地から1字上げ](質問90・物語の効用、七四頁)

[#地から1字上げ](ひとつ、村上さんでやってみるか、朝日新聞社、2006年)

 

閣下も悪党だ

役人は腐ってる

殺しても

他のクズが来るだけ

いくらやってもキリがない

それより師の遺言を

宝を寄付して

五毒門の汚名を晴らそう

五毒門って?

それでいい

 

[#地から1字上げ](映画・五毒拳)

 

彼女は肯いて、小さなノートにメモをとっていた。彼女だってそんな取材に興味があるわけではないし、僕の方もクッキング・プレートに個人的な関心があるわけではない。我々はそれぞれの仕事をこなしているだけのことなのだ。

 

「ずいぶん台所のことにくわしいんですね」と僕の説明が終わったあとで彼女は言った。

 

「仕事ですからね」と僕は営業用の笑顔で答えた。「でも、それとはべつに料理を作るのは好きです。簡単な料理だけれど、毎日作っていますよ」

 

「台所には本当に統一性が必要なのかしら?」と彼女は質問した。

 

「台所じゃなくてキッチンです」と僕は訂正した。「どうでもいいようなことだけれど、会社がそう決めているものですから」

 

「ごめんなさい。でもそのキッチンには本当に統一性が必要なのかしら? あなたの個人的な意見として」

 

「僕の個人的な意見はネクタイを外さないと出てこないんです」と僕は笑いながら言った。「でも今日は特別に言っちゃいますけれど、台所にとって統一性以前に必要なものはいくつか存在するはずだと僕は思いますね。でもそういう要素はまず商品にはならないし、この便宜的な世界にあっては商品にならないファクターは殆んど何の意味も持たないんです」

 

「世界は本当に便宜的に成立しているの?」

 

僕はポケットから煙草をとりだして口にくわえ、ライターで火をつけた。

 

[#地から1字上げ](象の消滅、五一頁)

[#地から1字上げ](村上春樹全作品8、講談社、1991年)

 

Is the world such a pragmatic place?

 

「世界は本当にそんなに実用的な(プラグマティックな)ものでしょうか」。原文は「世界は本当に便宜的に成立しているの?」と少し難解な言い回しとなっている。

 

[#地から1字上げ](一六四頁)

[#地から1字上げ](村上春樹象の消滅」英訳完全読解、NHK出版、2015年)

 

草の根の蛇の眠りにとどきけり 桂信子

 

[#地から1字上げ](芭蕉忌に芭蕉の像もなかりけり――正岡子規

 

「他者」

 

美しい

堕ちていくカンダタ

誰も登って来るなと叫びながら――

 

 

あなたはどう思いますか。