ラスト・ポエム(並立制2)

指ふれしところ見えねど桃腐る 津田清子

 

[#地から1字上げ](梨むくや甘き雫の刃を垂るる――正岡子規

 

半藤 この提言を読んでずいぶんとアタマが整理されたし、なるほど、とも思いました。ですが、わたしはそれでもやっぱり九条削除には反対なんです。たしかにおっしゃるとおり安全保障をめぐる国際環境は時代によって変わるでしょう。しかしわたしたち日本人はあの戦争に敗れたとき、国家権力に交戦権を与えないと決めた。それが九条なんです。

 

政治状況によって仮に安全保障政策と憲法との整合性があやしくなっても、それでもなお、この決意は、降ろしてはいけないと、わたしは思います。憲法の「前文」の「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し」とあるこの「決意」は、死んでからでも変わりません。

 

[#地から1字上げ](井上達夫氏の九条削除論、一九〇頁)

[#地から1字上げ](憲法を百年いかす、筑摩書房、2017年)

 

先生、この半藤氏の「決意」(思い)の何がいけないのかと言えば、安倍総理は、政府の行為で戦争を起こすとは一言も言っていないということです。安倍総理が言っているのは、北朝鮮のミサイルが日本に飛んで来たらどうするか、それを撃ち落すのは自衛権の行使だということです。

 

諸君、悪いのは北朝鮮じゃないか。北からの軍事攻撃に対して、日本政府は、国民の生命及び財産を守る義務がある。だから、九条に自衛隊を明記しても、これまでの専守防衛と平和主義の理念は変わらないのである。

 

[#地から1字上げ](安倍総理の立場は半藤氏・保阪氏と同じ曖昧平和主義である)

[#地から1字上げ](はい・いいえ・どちらともいえない)

 

半藤 戦時下の日本には軍国大人ばかりがいました。ですから、井上氏の「消極的正戦論」、論理的にはありかと思いましたけど、やはり現実的にはありえませんね。それに、正直言ってわたし自身は、どうしても絶対的平和主義までは踏み切れないんです。と言って、諦観的平和主義の「不正な平和でも、戦争よりはまし」というわけにもいかないなあ、と思う。わたしはもうひとつ、曖昧平和主義だ。

 

保阪 同感です。曖昧模糊平和主義ですね。ぼくはこの分類を読んで、ふと、ある著名人から無抵抗・非暴力を貫く絶対平和主義の境地に達していると聞かされたことを思いだしました。ぼくは、自衛権の行使ということが完全に無いとは言えないと思うから、かならずしも絶対平和主義がいいとは思わない。

 

[#地から1字上げ](「消極的正戦論」批判、一九四頁)

[#地から1字上げ](憲法を百年いかす、筑摩書房、2017年)

 

先生、半藤氏の曖昧平和主義では――そもそもこの言葉の定義がよくわからないが――現実的に政治日程になっている、法的瑕疵は一切ない、安倍総理憲法改正は止められないのですか。

 

諸君、というか、半藤氏の言う、政治状況によって(仮に)安全保障政策と憲法との整合性があやしくなっている事態こそが、安倍総理の新安保法制であり、空母いづもの改造計画である。

 

[#地から1字上げ](いづもは攻撃型空母ですが合憲です――安倍総理

[#地から1字上げ](ホルムズ海峡は海外派兵ですが合憲です――安倍総理

 

半藤 その護憲派には二派あって、ひとつは原理主義護憲派。「自衛隊日米安保は存在自体が違憲」という立場の人たちです。かれらは、「専守防衛自衛隊違憲だけど必要だから、違憲の烙印を押し続けながら存在させよう、と。要するに、違憲状態の固定化を望んでいる」とする。もうひとつが、「専守防衛であれば自衛隊も安保も合憲である」という修正主義的護憲派。歴代の内閣法制局の見解とおなじ立場の人たちです。

 

井上氏はこれを批判する。「専守防衛の範囲なら」という内閣法制局の見解自体、すでに解釈改憲そのものである、と。「つまり、修正主義的護憲派は、自分たちがすでに解釈改憲を行っていながら、違った意見を持つ安倍政権にはそれを許さないと主張している。ダブル・スタンダード以外のなにものでもない」というわけです。

 

[#地から1字上げ](井上達夫氏の九条削除論、一九〇頁)

[#地から1字上げ](憲法を百年いかす、筑摩書房、2017年)

 

先生、おそらく、保阪氏も、個別的自衛権の範囲で北朝鮮のミサイルを撃ち落すことは容認するのでしょう。しかし、そのような自衛権の行使とは、国際的には日本政府による戦力の行使です。

 

諸君、おそらく、保坂氏とは違い、われわれには皮膚感覚がないのだろう。

 

[#地から1字上げ](けっこう仮面もびっくり――新党わさお民進党

[#地から1字上げ](自衛隊が戦力ではないというのは無理がある――石破茂

 

半藤 たいへん結構だと思います。

 

いま人類は、核戦争が目の前にあるということを知っている。核爆弾を受けた私たち日本人が、核戦争を起こさないための力になるためには、九条の一項と二項がどうしても必要です。世界のどこへ行っても通用する叡智だから、これをせめて漱石なみに百年もたせたら、たぶん、たぶん、ほかの国にもこの良さが理解され拡まっていくことでしょう。

 

[#地から1字上げ](九条を百年もたせて拡げる会、二一八頁)

[#地から1字上げ](憲法を百年いかす、筑摩書房、2017年)

 

 

先生、これは日記ですね。どうぞ。

 

諸君、何だかなあ。

 

AMK「この投稿どうなん?」

FCH「あたいは( )されないよ」

FHK「Alex?」

MYZ「Rだよね。日本国の敵は安住では?」

宮崎駿「日本人は忘れてはいけない」(つづく)

 

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