神宮参拝
あまたなる人らの支へ思ひつつ白木の冴ゆる新宮《にひみや》に詣づ
来る年が原子爆弾による被災より七十年経つを思ひて
爆心地の碑に白菊を供へたり忘れざらめや往《い》にし彼《か》の日を
広島市の被災地を訪れて
いかばかり水流は強くありしならむ木々なぎ倒されし一すじの道
[#地から1字上げ](天皇陛下)
七十年
いさぎよく 帽振りゆきしおもかげは 老ゆることなし。七十年過ぐ
後につづく者はなかれ と言ひおきて 発ちゆきけり。征きて還らず
命果つる日まで思はん。南《みなみ》の海底ふかく 果てゆきし友
[#地から1字上げ](岡野弘)
天皇陛下は新年に当たって感想を宮内庁を通じて文書で発表された。
戦後70年の節目の年を迎えるに当たり、先の戦争で戦場や原爆、空襲などで亡くなった人々は「誠に多いものでした」とした上で、「満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び、今後の日本のあり方を考えていくことが、今、極めて大切なこと」と強調された。
[#地から1字上げ](読売新聞、2015年1月1日)
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「何しろ項羽と云う男は、英雄の器じゃないですな。」
「そうかね。」
「それは強いことは強いです。何しろ塗山の禹王廟にある石の鼎さえ枉げると云うのですからな。現に今日の戦でもです。私は一時命はないものだと思いました。李佐が殺される、王恒が殺される。その勢いと云ったら、ありません。それは実際、強いことは強いですな。」
「ははあ。」
「しかしです。」
「しかし、英雄の器じゃありません。その証拠は、やはり今日の戦ですな。烏江に追いつめられた時の楚の軍は、たった二十八騎です。雲霞のような味方の大軍に対して、戦った所が、仕方はありません。それに、烏江の亭長は、わざわざ迎えに出て、江東へ舟で渡そうと云ったそうですな。もし項羽に英雄の器があれば、垢を含んでも、烏江を渡るです。そうして捲土重来するです。面目なぞをかまっている場合じゃありません。」
「すると、英雄の器と云うのは、勘定に明いと云う事かね。」
「いやそう云うつもりじゃないです。――項羽はですな。項羽は、今日戦の始まる前に、二十八人の部下の前で『項羽を亡すものは天だ。人力の不足ではない。その証拠には、これだけの軍勢で、必ず漢の軍を三度破って見せる』と云ったそうです。そうして、実際三度どころか、九度も戦って勝っているです。私に云わせると、それが卑怯だと思うのですな、自分の失敗を天にかずける――天こそいい迷惑です。それも烏江を渡って、江東の健児を糾合して、再び中原の鹿を争った後でなら、仕方がないですよ。が、そうじゃない。立派に生きられる所を、死んでいるです。私が項羽を英雄の器でないとするのは、勘定に暗かったからばかりではないです。一切を天命でごまかそうとする――それがいかんですな。英雄と云うものは、そんなものじゃないと思うです。蕭丞相のような学者は、どう云われるか知らんですが。」
「そうかね。項羽はそんな事を云ったかね。」
「云ったそうです。」
「弱いじゃないですか。いや、少くとも男らしくないじゃないですか。英雄と云うものは、天と戦うものだろうと思うですが。」
「そうさ。」
「天命を知っても尚、戦うものだろうと思うですが。」
「そうさ。」
「すると項羽は――」
「だから、英雄の器だったのさ。」
[#地から1字上げ](芥川龍之介、英雄の器)
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先生、国語の授業では、普通、こういうことはやりません。文学作品というものは、神聖にして侵すべからざるものだからです。
諸君、よう報せてくれた。よう報せてくれた。米屋、何でうち、言うて来えへん。聞いてたやろ、偉いことができた。とにかく、お前、米屋、行って来い。わしはこれから田舎へ電報打ちに行って来るさかい。
[#地から1字上げ](ちょっと様子がおかしいぞ)
その虐殺犠牲者らを慰霊する民間主催の式典への追悼文を小池百合子東京都知事は8年続けて見送るという。前任に続き、就任初年は送っていた▲朝鮮人虐殺を巡り「何が明白な事実かは、歴史家がひもとくもの」と言葉を濁してきた小池氏だ。追悼文の見送りを「(大法要で)全ての犠牲者に慰霊の気持ちを表している」と説明する。天災と虐殺の犠牲をなぜ、ひとくくりにするのか――
[#地から1字上げ](毎日新聞、余禄)
[#地から1字上げ](2024年9月1日)
ああ、それやったら、キカンはずや、糠に釘。
[#地から1字上げ](命知らずのジョシュー)
[#地から1字上げ](蘇州夜曲・夏川りみ)