俳句、来るべきもの(ノモスとピュシス)

やはらかに金魚は網にさからひぬ 中村汀女

 

[#地から1字上げ](荒涼と荒川鰻裂いて貰ふ 細見綾子)

 

「作ったような感じが苦手」 石田ゆり子

“寝起き写真” 削除の背景に見える “承認欲求”

 

「いつぞやの、寝癖アート」

 

6月6日、このような書き出しの文章と、方々に毛先が飛んだボサボサ髪の自身の写真をインスタグラムに投稿した石田ゆり子(54)。

 

“寝癖(アート)”と題していることから、寝起きなのだろう。ラフなTシャツ姿、起き抜けのすっぴんのように見える。

 

「作った感じが苦手」

 

この “寝癖アート” の投稿は賛否を呼んだ。

 

“奇跡のアラフィフ” ともいわれ、女性が憧れる女性として人気の石田さんなので、無造作でありのままの姿には、“寝癖まで可愛いです!”といったインスタらしいファンの称賛コメントが多数ついていましたが、ネット全体で見ると、“こんなところまで公開しなくても” “すっぴんなのにキレイって言われたい、作ったような感じが苦手” といった否定的な意見も多く見られました。

 

現在、こちらの寝癖姿は見ることができない。

 

投稿がネットニュースになって、さらに多くの人の目に留まることになり、石田さんはその投稿を現在、削除しています。

 

「インスタがたびたび物議」

 

SNSの投稿を削除するという行為自体、賛否あるが……。

 

石田さんの発信が物議を醸すようなことは初めてではありません。今年1月にもペット愛好家として “ペットの機内同伴” についての彼女の意見が賛否を呼び、その際、コメント欄を閉鎖。そのうえで“どうか怒らないで”と懇願しつつ反論を投稿。さらなる賛否の声が上がってしまうことに。

 

これには 《反対の意見がきたら自分が被害者みたいなムーブで閉鎖とか……》 といった“否” の意見も相次いだ。ほかにも、

 

航空機のペット問題以前にも、記者が石田さんのインスタの投稿を受けての質問をしたことについて、“私の暮らしはインスタの世界がすべてではないのに” と “公開”。そしてこれも後に削除。インスタが人気を博しているわけですし、直近の彼女を知れる場なのですから、関連した質問が多くなるのも仕方ないとは思うのですが。

 

“54歳なのに” きれい、可愛い、自然体。そこに憧れる人も多い一方で、時折、波紋を呼ぶ投稿をすることや、それを削除したり反論のような投稿をすることに、“面倒くさい” “承認欲求が強い” と感じられてしまうことも少なくない。

 

石田さん自身が批判を浴びるような行為をしているわけでもないので、必要以上に “声” に左右されないほうがいいと思うのですが……。

 

[#地から1字上げ](週刊女性PRIMEによるストーリー・縮約)

 

 

先生、そもそも、世の中に、面倒くさくない女優なんているのですか。

 

諸君、また、してくれるかな?

 

[#地から1字上げ](明石家さんま中居正広大竹しのぶ

 

そんなことより、オレ、テレビでおもろいか。

 

[#地から1字上げ](さんまのまんま、ゲスト・陣内智則さん)

 

主筆 堀川さん。あなたは一体真面目なのですか?

 

保吉 ええ、勿論真面目です。世間の恋愛小説を御覧なさい。女主人公はマリアでなければクレオパトラじゃありませんか? しかし人生の女主人公は必ずしも貞女じゃないと同時に、必ずしもまた婬婦でもないのです。もし人の好い読者の中に、一人でもああ云う小説を真に受ける男女があって御覧なさい。もっとも恋愛の円満に成就した場合は別問題ですが、万一失恋でもした日には必ず莫迦莫迦しい自己犠牲をするか、さもなければもっと莫迦莫迦しい復讐的精神を発揮しますよ。しかもそれを当事者自身は何か英雄的行為のようにうぬ惚れ切ってするのですからね。けれどもわたしの恋愛小説には少しもそう云う悪影響を普及する傾向はありません。おまけに結末は女主人公の幸福を讃美しているのです。

 

[#地から1字上げ](大正十三年三月)

[#地から1字上げ](芥川龍之介、或恋愛小説――或は「恋愛は至上なり」――)

 

みちでバッタリ、出会ったよ

でも、もう、一度も会わなかったよ

 

[#地から1字上げ](愛がなくちゃね、矢野顕子

美貌の青空(Bibo no Aozora)

坂本龍一の Bibo no Aozora に歌詞があるとは知らなかった。美貌の青空。それを大貫妙子も歌っていたが、何だかピンと来なかった。おそれおおいと思ったが、新党わさおの歌詞に変えてみた。くれぐれも Binbo no Aozora ではないから間違わないで――。

それではトップバッターから張り切ってまいりましょう。レッツゴーミュージック!

 

わさおの青空(Wasao no Aozora)

 

眼差しに溺れた

気高さは不実さ

 

夏だった

狂った空も、狂った声も

小さなものが死んでいく

 

愛さないで欲しい

この傷口は禁じられ

眼差しだけが知っていた

 

星々は別れて

棲みつく事を始めるだろう

 

白いけだものだった日々よ

イカ焼きの身を舌で味わう

都会では赤い罌粟の花――

 

捨てられて

また、拾われて

溢れ出した虹の果てに或る、

わさおの青空

 

狭いながらも愉しい

わさおの青空

 

狂おしい夏だった

KASUMI・2024

都知事選の全裸はすべて剥がされて

 

[#地から1字上げ](高原の小枝を大切に・真田広之

俳句、来るべきもの(ジェダイ)

杜若語るも旅のひとつかな 芭蕉

 

[#地から1字上げ](象潟や雨に西施がねぶの花――芭蕉

 

(これまでのあらすじ)

 

官僚主導の時代から政治主導の時代へ。そして、……

 

A 金に汚い自民党議員と汚くない自民党議員

B 天皇制に反対する立民議員と反対しない立民議員

C 天皇=元首に賛成する野党議員と賛成しない野党議員

 

[#地から1字上げ](NHKプロフェッショナル・仕分けの流儀)

[#地から1字上げ](もう、政治屋どもの公約なんかいらない)

[#地から1字上げ](有権者が主導する選挙区へ・松原仁

[#地から1字上げ](カタログ選挙はありまーす)

 

私がいることが妨げになってはならない。

 

[#地から1字上げ](恨み節)

[#地から1字上げ](森氏、謝罪と不満と・混乱残し去る)

[#地から1字上げ](読売新聞、2021年2月14日)

 

NHKの連続テレビ小説「おかえりモネ」

あれはないんじゃないですか

 

手術をして胸を開いたから転移が見つかった

どうして悩む必要があるの

 

[#地から1字上げ](言語論的転回)

[#地から1字上げ](ビッグ・ホール、ビッグ・ホール)

[#地から1字上げ](ゴーストバスターズ・2016年)

 

西施心を病みて其の里にヒンするに、其の里の醜人見て之を美とし、帰りて亦た心を捧じて其の里にヒンす。其の里の富人は之を見、堅く門を閉ぢて出でず。貧人は之を見、妻子をヒッサげて之を去りて走れり。彼はヒンの美なるを知るも、ヒンの美なる所以を知らず。

 

[#地から1字上げ](顰に倣う、一二四頁)

[#地から1字上げ](漢文名作選第2集6、故事と語録、大修館書店、1999年)

 

西施は胸を患って、自分の故郷の村で胸の痛さに顔をしかめていたが、その村の醜女がそのしかめた顔を美しいと思い、いったん家に帰ると、顔をしかめて出直し、村を顔をしかめたまま歩き回った。すると、そのすさまじさに村の金持ちたちは堅く門を閉ざして外出しなくなり、貧乏人は、閉ざす門がないので、妻子を引き連れて村から逃げ出した。この話の醜女は、西施が顔をしかめることが美しいということはわかっていても、なぜ顔をしかめても美しいのかという事実がわからなかったのである。

 

[#地から1字上げ](顰に倣う、一二四頁)

[#地から1字上げ](漢文名作選第2集6、故事と語録、大修館書店、1999年)

 

心の働きに口が連動するとは限らない。

 

集団社会から弾かれぬために人はしばしば言葉をのみ込む。

 

「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」。森喜朗氏の発言には女性に対する理不尽な決めつけとともに、活発な議論自体を是としない考えが滲む。こうしたトップの下で、数多の思いが言葉として発信されないまま封印されてきたとしても不思議はない。

 

森氏が東京五輪パラリンピック大会組織委の会長を辞することになった。今回の発言で世の封印が一斉に解かれ、各人の胸底に積もる思いが批判となって殺到した。そんな気がしてならない。

 

有害無益でしかない言葉なら口にすべきでないのは当然だろう。そこを「わきまえる」べきは当の森氏だった。

 

[#地から1字上げ](よみうり寸評)

[#地から1字上げ](読売新聞、2021年2月14日)

 

光る時ひかりは波に花芒    稲畑汀子

薄氷に透けてゐる色生きてをり 同

 

先生、われわれは希望の党(2017年)の失敗を知っています。どこを直せばいいですか。

諸君、あの時、石川佳純選手(ロンドン)は若かった。でも、もう、すでに愛ちゃんは、……

 

[#地から1字上げ](いま・ここの政界再編)

[#地から1字上げ](新党わさお40億年の到達点)

[#地から1字上げ](左も右も、論理国語に苛立った。離党なき政権交代プラン)

 

追い越して行く車の窓で

手を振るあなたに 小さく投げKISS

 

探しつづけたい

ここにふたり生きている理由を

 

並んで走る車の窓に

あなたと私の 未来がかさなる

 

[#地から1字上げ](大貫妙子、CALL MY HEART)

突撃!加藤陽子先生(まいっちんぐ)

いかん、いかん、いかん

首が動いている

 

こいつが呼んでいるんだ

 

[#地から1字上げ](もののけ姫

 

世の中が、AIによってどう変わりうるのかについて、少し例示してみたい。

 

まず組織運営が変わりうる。現在、ほとんどの企業は部とか課といった固定の組織をもっている。ところが、AIを使えば柔軟にそれをコントロールして、ミッションごとに動的に組織をつくることができる。そうなると、個人からみれば同じ会社に属している必要がない。自分の特技を生かせるミッションがあれば、そこに出て行って仕事をして、終わったらまた次のミッションへ移ることができる。

 

[#地から1字上げ](AI/ITが可能にする新しい社会システム、四七頁)

[#地から1字上げ](人工知能・その到達点と未来、小学館、2018年)

 

また、政党を選ぶとき、ふつう有権者マニフェストを判断基準にする。しかし、これはさまざまな政策が抱き合わせで書いてあるわけなので、個々の政策に対して個別に投票できるわけではない。これは商法で禁止されている抱き合わせ商法と同じ仕組みである。

 

[#地から1字上げ](AI/ITが可能にする新しい社会システム、四七頁)

[#地から1字上げ](人工知能・その到達点と未来、小学館、2018年)

 

こたえた

分かるか

 

サンが危ない

行こう

 

[#地から1字上げ](もののけ姫

 

お前にサンを救えるか

Can you save her?

 

[#地から1字上げ](もののけ姫

 

グアテマラ、リビングストン

1998年

 

でも、その未来は

私が阻止した

 

息子を守るために

人類を守るために

 

ジョン・コナー

 

私はかつて

30億人を救ったのに

 

ジョン!

 

息子を死なせた

 

ジョン!

 

機械に息子の命を奪われた

そして、私も終わった

 

[#地から1字上げ](ターミネーター・ダーク・フェイト)

 

ワーオ!(東野篤子教授)

ワーオ!(廣瀬陽子教授)

 

[#地から1字上げ](NHK・BS)

 

左翼の6人を排除したことで菅総理自民党の支持者から喝采を浴びた。

 

[#地から1字上げ](田崎史郎政治ジャーナリスト・ひるおび)

 

他の5人の排除はわかるが加藤陽子氏はニュートラルだ(左翼ではない)。

 

[#地から1字上げ](当時は必要だった橋下徹コメンテーター・ミヤネ屋)

 

私は加藤陽子氏の本を読んだことはありません。

 

[#地から1字上げ](コロナに勝って首相を辞めた男・菅よしひで)

 

石原慎太郎は知の巨人だった。

 

[#地から1字上げ](カメの直言・老いたる亀井静香さん)

 

先生、後ろ、後ろ!

諸君、台車もない…

 

ナニ、

フィルムハイッテナイ?

 

ナニカガマチガイダロ

日本人がそんな賢いとは思わない

 

デキル

ハジナイ

 

わたしがぜんせきにんをとっておわびします

 

オワビ?

 

そう、神はすべての過ちを

許せと教えられました

 

[#地から1字上げ](陸軍中野学校・雲一号指令)

 

――安倍晋三首相(当時)の私的諮問機関「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」が2017年1月23日、論点整理を公表した。天皇陛下の退位に関して、一代限りで認める案と将来の天皇にも適用する案について利点と課題を併記。しかし、一代限りの特別立法で対応する政府方針に沿った内容となった。今後の議論をどう進めるべきか、意見を述べた。

 

今回の論点整理は、一般的な有識者会議と比べると慎重な表現が多用され、今後の検討の方向についても国会や世論の動向を参考にすると明記されている。だが、まやかしに見える。最初から有識者会議は政府の意向に沿って、現在の天皇(現・上皇)に限った退位が望ましいと考えているように見えたからだ。

 

天皇の退位に関しては、皇室典範改正による恒久化が筋だろう。憲法施行前の1946年12月、帝国議会で現行の皇室典範が承認された。1946年6月に内閣諮問機関「臨時法制調査会」が事実上、設置され、憲法を審議しながら同時並行で皇室典範の原案作りを行った。原案を作る過程では、退位の規定を置くべきだとの意見も出ていた。結局見送られたのは、退位規定を置けば、天皇の戦争責任が再燃するかもしれないとの懸念からだった。加えて、退位すれば一般人扱いとなり、極東国際軍事裁判にかけられるのではないかとの危惧もあったようだ。

 

このように皇室典範は、旧憲法下の帝国議会、枢密院で審議された。皇位継承を定めた憲法第2条が「国会の議決した皇室典範」によるとする以上、帝国議会で審議されたことには、当時の議員らから疑問の声も出されていた。今度こそ最高機関である国会で、象徴天皇の在り方を含め、皇室典範改正を議論してほしい。

 

三笠宮崇仁は1946年11月3日付の意見書で、「天皇は性格、能力、健康、趣味、嗜好、習癖ありとあらゆるものを国民の前にさらけ出して批判の対象にならねばならぬから、実際問題とすれば今まで以上に能力と健康とを必要とする」と指摘した。帝国議会では、退位規定を皇室典範に入れるべきだとの意見も出ていた。当時の法制局が作成した想定問答では、旧皇室典範と同様に退位規定を皇室典範に入れない理由を、戦前の天皇統治権の総攬者だったのに比べ、戦後の天皇は象徴だから、摂政設置で対応できるとしていた。それに対し、天皇の叔父の三笠宮が、象徴であり続ける困難さを看破していた点は興味深い。当時の官僚たちが考えていた象徴像と、デジタル時代で映像が瞬時に拡散する現代では、象徴の在り方など当然変わってくるはずだ。

 

戦後の象徴天皇像は、昭和天皇天皇(現・上皇)が連携して作り上げたといえる。第一次世界大戦の激戦地を若き日に訪れ、平和の大切さを肝に銘じた昭和天皇が戦争の時代を生きなければならなかった苦衷を、「誠に不本意な歴史」だったと、即位20周年の会見で総括したのは天皇だった。国内では、被災者の苦難に寄り添い、国外では、日本が始めた戦争で犠牲となった国の人々を悼む旅は、天皇の発意と国民の期待を勘案してなされてきたものだろう。戦争の惨禍を、象徴天皇制戦争放棄の2本柱で乗り切った過程こそ、戦後日本の歩みにほかならなかった。

 

直近の未来を想定しつつ皇室典範を読み直せば、「すべて国民は法の下に平等」だと規定する憲法第14条の男女平等概念との齟齬があると気づく。皇室典範憲法皇位継承要件のずれも含め、皇室典範改正が議論される時なのではないか。

 

[#地から1字上げ](2017年1月24日)

[#地から1字上げ](今こそ皇室典範=皇室法改正論議を、一一二頁)

[#地から1字上げ](加藤陽子、この国のかたちを見つめ直す、毎日新聞社、2021年)

 

あの6人は排除します。

 

[#地から1字上げ](仮に総裁選に出馬していたら派閥の論理で再選していた総理大臣・菅よしひで)

百合姫の祈り(花)

ああ、犬のようだな。

 

そのあるべき姿

役回り

 

私は一人

厳しく叱る

 

犬として

人間として

 

この美しい砂の上で

それはひとえに

 

自由な時間

楽しい仕事

 

見つけた特集頁の

切り抜きに

 

海のように

消えていく波にも

 

近づくたびに、驚、いて。

百合姫の祈り(椅子)

椅子は「もの」として一体になる

座る時、そのものはものを越えて

そのものに託されたわたしの家で

つながりを通すことで焦点を掬ぶ

手の中で支える暮らしにも習いて

 

当てかいな(ふだんの心)

ええねんという(桃の花)

 

どのように説明しても

普段着のようなイメージで

生きていくことを感じる。視ることでは

大河にまけるニュースでも。いい気持ち

私にはまだ、時計替わりになる時間ならある

時間ですよ!加藤陽子先生(まいっちんぐ)

フェランド

 

僕は妙なるセレナータを

僕の女神に作ってやりたい。

 

グリエルモ

 

愛の女神(チテレア)の名誉にかけて

僕は宴を開くとしよう。

 

ドン・アルフォンゾ

 

わしもまた宴の仲間にしてくれるだろうな?

 

フェランド、グリエルモ

 

勿論だとも!

 

フェランド、グリエルモ、ドン・アルフォンゾ

 

盃を重ねて乾杯しようぜ

愛の女神に!

 

[#地から1字上げ](3 僕は妙なるセレナータを)

[#地から1字上げ](歌劇「コシ・ファン・トゥッテ」)

 

今後は頭と身体の鍛錬を怠らず、今いちど「時代」が振り向いてくれるチャンスがありましたらしっかりとその前髪をつかみ、よりわかりやすい「歴史」を書いてみたいと思います。「幸運の女神には前髪しかない」とのフレーズをふまえてこう書きましたが、関連する事項として最後に歴史の女神の話をしておきましょう。歴史をつかさどる女神クリオは、女神のうちで最も内気で控えめで、めったに人にその顔を見せなかったといいます(E・H・ノーマン『クリオの顔』という歴史随想集があり、岩波文庫で読めますのでどうぞ)。

 

[#地から1字上げ](おわりに、四〇七頁)

[#地から1字上げ](加藤陽子、それでも、日本は「戦争」を選んだ、2009年)

[#地から1字上げ](2013年・YBC読書感想文コンクール課題図書)

 

私たちは日々の時間を生きながら、自分の身のまわりで起きていることについて、その時々の評価や判断を無意識ながら下しているものです。また現在の社会状況に対する評価や判断を下す際、これまた無意識に過去の事例からの類推を行ない、さらに未来を予測するにあたっては、これまた無意識に過去と現在の事例との対比を行なっています。

 

そのようなときに、類推され想起され対比される歴史的な事例が、若い人々の頭や心にどれだけ豊かに蓄積されファイリングされているかどうかが決定的に大事なことなのだと私は思います。多くの事例を想起しながら、過去・現在・未来を縦横無尽に対比し類推しているときの人の顔は、きっと内気で控えめで穏やかなものであるはずです。

 

二〇〇九年六月 公文書管理法成立の報を聞きながら

 

[#地から1字上げ](おわりに、四〇八頁)

[#地から1字上げ](加藤陽子、それでも、日本は「戦争」を選んだ、2009年)

[#地から1字上げ](2013年・YBC読書感想文コンクール課題図書)

 

ドラベッラ

 

私の胸をかきむしる

狂おしいばかりの苦しみよ。

心の中に

とどまらないで、

この苦痛が私を

死なせてしまうまで。

もしも生き永らえるなら

痛ましい恋の悲惨な実例を

復讐(エウメニディ)の女神に

認めさせてやりましょう。

私の口をついて出る

激しい呻き声で。

 

[#地から1字上げ](9 私の胸をかきむしる)

[#地から1字上げ](歌劇「コシ・ファン・トゥッテ」)

 

デスピーナ

 

男の人たちに、兵隊さんたちに

貞節をお望みになるのですか?

全く、人には聞かせたくない話ですわ!

どれもこれも

似たりよったり、

風に揺らぐ木の葉も

気ままなそよ風も、

男たちよりは

お固いものよ。

嘘の涙に

偽りの目つき

人だましの声に

みせかけの愛撫、

これみな、男の才能の

第一歩なのですわ。

自分の慰みにしか

女を愛さないのです。

そして私たち女を嘲り、

真の愛情を拒むのです。

野蛮な人たちには、

憐みを求める価値さえありません。

報いてやりましょうよ、

女たちだって同じ額だけのものを

この有害、

不謹慎な人種に。

気楽に愛して

やりましょう!

 

[#地から1字上げ](10 男の人たちに、兵隊さんたちに)

[#地から1字上げ](歌劇「コシ・ファン・トゥッテ」)

 

この本を最初に読んだとき、はじめの部分がよくわからなかった。ことばはわかっても心が伝わらない。後半になるとずっとわかりがよくなるが、なお、はっきりしないところがある。あわてて、もう一度、読み返してみるとよくわかる。こちらの読み方のせいばかりではなく、この本はもともと二度読まれることをのぞんでいるのかもしれない。

 

古来、詩歌は、一度だけでなく二度読まれることを前提にしているようである。和歌の披講で二度、読み上げられるのは偶然ではない。すぐれた表現は再読を求める。

 

元の講演を聴いた人たちを一次的享受者とすれば、活字、本を読むのは二次的で、さらに日本語になった翻訳の読者は三次的享受者であるけれども、三次的受け手が、もっとも少ないことを学ぶとは限らない。ひょっとすると、もっとも多くのものを読みとるかもしれない。

 

そういうわけで、この本は高級なのである。

 

二〇一五年十二月

 

[#地から1字上げ](外山滋比古

 

[#地から1字上げ](おわりに)

[#地から1字上げ](ジョージ・ソーンダーズ、人生で大切なたったひとつのこと、海竜社、2016年)

 

これが森会長の講演(40分)だったのか。ならば、もう一度!

 

[#地から1字上げ](デマを流された)

[#地から1字上げ](ニーチェもびっくり)

[#地から1字上げ](五輪「やりきる」――菅総理

 

先生、嘘でもいいから世界に対して森会長を弁護するのが政治家としての国際感覚であり、NHK高校講座国語表現・れんちゃんのディベート術なのですか。

 

諸君、菅総理には外交は無理。辞任した以上、森会長は国際的には女性蔑視主義者。

 

[#地から1字上げ](ニーチェもびっくり)

[#地から1字上げ](アモール・ファティ)

[#地から1字上げ](五輪「やりきる」――菅総理

 

――総理、イタリアの方です。7月の東京五輪の開会式には森前会長は出席しますか。

 

菅総理 別人格です。

 

[#地から1字上げ](不要不急の質問は控えて下さい――女司会者)

[#地から1字上げ](ロン毛のマキャベリズムだ――ロイター通信)

[#地から1字上げ](じゃあ、次ぎは――江川紹子さん、どうぞ)

 

先生、投書が来ています。じゃあ、森会長は、2月4日の釈明会見でどうすればよかったのか。

諸君、自然条件に左右される冬のスポーツは想定外に対応する危機管理と技のデパートである。

 

[#地から1字上げ](仮説を検証するための滑りがテーマ――スピードスケート・小平奈緒

[#地から1字上げ](捲土重来――来年、富士急の小穴桃里選手は26歳)

[#地から1字上げ](甘く危険な香り――愛子さま、マイク、マイク)

 

先生、投書が来ています。あなた方の言う、幸せとは何か。か弱いキャディーさんに重い荷物を背負わせてゴルフをすることがブルジョワなのか。

 

諸君、気のせいか、NHKまで加藤陽子先生には触れないようになっている。それでも、というべきか、やっぱり、というべきか。定年後は民放の番組に天下るアナウンサーも多い。

 

[#地から1字上げ](それでも、日本人は「菅総理」を選んだ)

 

先生、割って下さいよ。そのために都知事になったのではなかったのですか。

 

諸君、天井のガラスを割ったら危ないだろう。

 

[#地から1字上げ](大日本人

[#地から1字上げ](アゲ・アゲ・アゲ・アゲ)

[#地から1字上げ](サボテン・ナイト・フィーバー)

[#地から1字上げ](ラクダでGO!――よみがえれGOTOキャンペーン月間)

 

先生、このまま行ったら、夏の東京オリンピックは玉砕です。観客を半分にしたり、最悪、無観客も想定したりすることが、果たして本当の意味での危機管理でしょうか。

 

諸君、皆の応援したい思いに、自分がコントロール出来る隙はない。

 

[#地から1字上げ](小平奈緒・スピードスケート)

[#地から1字上げ](読売新聞、2018年2月10日)

[#地から1字上げ](やきとり戦国時代――鳥田むら・ひるおび)

[#地から1字上げ](売られたケンカは買う――ホルモンユカちゃん・ひるおび)

[#地から1字上げ](西村大臣、ぼくらどうすればいいのですか――根室食堂・ひるおび)

 

サンデル では、どうぞ。マイクを渡します。

 

男性5 (激しい口調で)レイさんが言っているような、全員の合意を待つなんていうことは「絵に描いた餅」ですよ! そんなのは無理ですよ。やっぱりある程度、みんなで論議はしなくちゃいけないと思うんですよ。だけどね、やっぱりいろんな意見が出てくるんですから。津波に襲われたとしても、私はここに残ると言い張ってる人がいたんです。それでは結局、(集団移転して)高台にまとまっては行けない。百十何年のうちに三回津波が来ているんですよ。だからいちばん大切なことは、津波で絶対に人命を失わないことだ、ということを最大の目標に決めないと、全員の合意なんか待っていたら何もできませんよ。(一同拍手)

 

サンデル ありがとうございます。

 

[#地から1字上げ](これからの復興の話をしよう、二一三頁)

[#地から1字上げ](マイケル・サンデル、世界の人たちと正義の話をしよう、早川書房、2013年)

 

サンデル では、どなたか最後に、「それでも合意は重要だ」と反論できる人はいないでしょうか。復興はとにかく前に進めるべきだという強い意見を聞いた後でも、それでも、合意は大切だと思う人。なぜそこに大切な価値があると思うのか、答えてくれる人はいませんか?

 

男性7 私は現在、宮城県の北部にある南三陸町というところで被災者支援をしております。ご存知の通り、南三陸町はほとんど町が壊滅している状態です。ということは、復興はイコール、新しい町を作るということだと思っております。多くの町民は、自分の町は自分で作りたいと言って一生懸命に議論をしています。当然ながらいろいろ意見の差はあります。でも、私は彼らの意見や考え方を見ていると、コンセンサスというのは、全員が合意するというよりは、納得という言葉が合っているような気がします。

 

彼らは議論をしながら、自分の気持ちを整理し、納得するのを待っているのだと思います。そういうふうに考えた時に、今やっている新しい町を作る議論というのは、あまりにも短すぎると思っています。そういう時間を彼らに与える必要が私はあるような気がしています。(一同、大きな拍手)

 

[#地から1字上げ](これからの復興の話をしよう、二一四頁)

[#地から1字上げ](マイケル・サンデル、世界の人たちと正義の話をしよう、早川書房、2013年)

 

先生、投書が来ています。どうして自民党の政治家は、芸者の文科大臣も含めて、世界からの批判に対して森会長を最後まで擁護しないで見殺しにしたのか。それこそが、日本人に特有の聞き流す組織風土そのものではないか。はたして、森会長の人間としての尊厳や名誉は守られたのか。

 

諸君、森会長はお星さまになったんだ。

 

[#地から1字上げ](ホームにて)

[#地から1字上げ](世界のクロサワ・映画「醜聞(スキャンダル)」)