フェランド
僕は妙なるセレナータを
僕の女神に作ってやりたい。
グリエルモ
愛の女神(チテレア)の名誉にかけて
僕は宴を開くとしよう。
ドン・アルフォンゾ
わしもまた宴の仲間にしてくれるだろうな?
フェランド、グリエルモ
勿論だとも!
フェランド、グリエルモ、ドン・アルフォンゾ
盃を重ねて乾杯しようぜ
愛の女神に!
[#地から1字上げ](3 僕は妙なるセレナータを)
[#地から1字上げ](歌劇「コシ・ファン・トゥッテ」)
今後は頭と身体の鍛錬を怠らず、今いちど「時代」が振り向いてくれるチャンスがありましたらしっかりとその前髪をつかみ、よりわかりやすい「歴史」を書いてみたいと思います。「幸運の女神には前髪しかない」とのフレーズをふまえてこう書きましたが、関連する事項として最後に歴史の女神の話をしておきましょう。歴史をつかさどる女神クリオは、女神のうちで最も内気で控えめで、めったに人にその顔を見せなかったといいます(E・H・ノーマン『クリオの顔』という歴史随想集があり、岩波文庫で読めますのでどうぞ)。
[#地から1字上げ](おわりに、四〇七頁)
[#地から1字上げ](加藤陽子、それでも、日本は「戦争」を選んだ、2009年)
[#地から1字上げ](2013年・YBC読書感想文コンクール課題図書)
私たちは日々の時間を生きながら、自分の身のまわりで起きていることについて、その時々の評価や判断を無意識ながら下しているものです。また現在の社会状況に対する評価や判断を下す際、これまた無意識に過去の事例からの類推を行ない、さらに未来を予測するにあたっては、これまた無意識に過去と現在の事例との対比を行なっています。
そのようなときに、類推され想起され対比される歴史的な事例が、若い人々の頭や心にどれだけ豊かに蓄積されファイリングされているかどうかが決定的に大事なことなのだと私は思います。多くの事例を想起しながら、過去・現在・未来を縦横無尽に対比し類推しているときの人の顔は、きっと内気で控えめで穏やかなものであるはずです。
二〇〇九年六月 公文書管理法成立の報を聞きながら
[#地から1字上げ](おわりに、四〇八頁)
[#地から1字上げ](加藤陽子、それでも、日本は「戦争」を選んだ、2009年)
[#地から1字上げ](2013年・YBC読書感想文コンクール課題図書)
ドラベッラ
私の胸をかきむしる
狂おしいばかりの苦しみよ。
心の中に
とどまらないで、
この苦痛が私を
死なせてしまうまで。
もしも生き永らえるなら
痛ましい恋の悲惨な実例を
復讐(エウメニディ)の女神に
認めさせてやりましょう。
私の口をついて出る
激しい呻き声で。
[#地から1字上げ](9 私の胸をかきむしる)
[#地から1字上げ](歌劇「コシ・ファン・トゥッテ」)
デスピーナ
男の人たちに、兵隊さんたちに
貞節をお望みになるのですか?
全く、人には聞かせたくない話ですわ!
どれもこれも
似たりよったり、
風に揺らぐ木の葉も
気ままなそよ風も、
男たちよりは
お固いものよ。
嘘の涙に
偽りの目つき
人だましの声に
みせかけの愛撫、
これみな、男の才能の
第一歩なのですわ。
自分の慰みにしか
女を愛さないのです。
そして私たち女を嘲り、
真の愛情を拒むのです。
野蛮な人たちには、
憐みを求める価値さえありません。
報いてやりましょうよ、
女たちだって同じ額だけのものを
この有害、
不謹慎な人種に。
気楽に愛して
やりましょう!
[#地から1字上げ](10 男の人たちに、兵隊さんたちに)
[#地から1字上げ](歌劇「コシ・ファン・トゥッテ」)
この本を最初に読んだとき、はじめの部分がよくわからなかった。ことばはわかっても心が伝わらない。後半になるとずっとわかりがよくなるが、なお、はっきりしないところがある。あわてて、もう一度、読み返してみるとよくわかる。こちらの読み方のせいばかりではなく、この本はもともと二度読まれることをのぞんでいるのかもしれない。
古来、詩歌は、一度だけでなく二度読まれることを前提にしているようである。和歌の披講で二度、読み上げられるのは偶然ではない。すぐれた表現は再読を求める。
元の講演を聴いた人たちを一次的享受者とすれば、活字、本を読むのは二次的で、さらに日本語になった翻訳の読者は三次的享受者であるけれども、三次的受け手が、もっとも少ないことを学ぶとは限らない。ひょっとすると、もっとも多くのものを読みとるかもしれない。
そういうわけで、この本は高級なのである。
二〇一五年十二月
[#地から1字上げ](外山滋比古)
[#地から1字上げ](おわりに)
[#地から1字上げ](ジョージ・ソーンダーズ、人生で大切なたったひとつのこと、海竜社、2016年)
これが森会長の講演(40分)だったのか。ならば、もう一度!
[#地から1字上げ](デマを流された)
[#地から1字上げ](ニーチェもびっくり)
[#地から1字上げ](五輪「やりきる」――菅総理)
先生、嘘でもいいから世界に対して森会長を弁護するのが政治家としての国際感覚であり、NHK高校講座国語表現・れんちゃんのディベート術なのですか。
諸君、菅総理には外交は無理。辞任した以上、森会長は国際的には女性蔑視主義者。
[#地から1字上げ](ニーチェもびっくり)
[#地から1字上げ](アモール・ファティ)
[#地から1字上げ](五輪「やりきる」――菅総理)
――総理、イタリアの方です。7月の東京五輪の開会式には森前会長は出席しますか。
菅総理 別人格です。
[#地から1字上げ](不要不急の質問は控えて下さい――女司会者)
[#地から1字上げ](ロン毛のマキャベリズムだ――ロイター通信)
[#地から1字上げ](じゃあ、次ぎは――江川紹子さん、どうぞ)
先生、投書が来ています。じゃあ、森会長は、2月4日の釈明会見でどうすればよかったのか。
諸君、自然条件に左右される冬のスポーツは想定外に対応する危機管理と技のデパートである。
[#地から1字上げ](仮説を検証するための滑りがテーマ――スピードスケート・小平奈緒)
[#地から1字上げ](捲土重来――来年、富士急の小穴桃里選手は26歳)
[#地から1字上げ](甘く危険な香り――愛子さま、マイク、マイク)
先生、投書が来ています。あなた方の言う、幸せとは何か。か弱いキャディーさんに重い荷物を背負わせてゴルフをすることがブルジョワなのか。
諸君、気のせいか、NHKまで加藤陽子先生には触れないようになっている。それでも、というべきか、やっぱり、というべきか。定年後は民放の番組に天下るアナウンサーも多い。
[#地から1字上げ](それでも、日本人は「菅総理」を選んだ)
先生、割って下さいよ。そのために都知事になったのではなかったのですか。
諸君、天井のガラスを割ったら危ないだろう。
[#地から1字上げ](大日本人)
[#地から1字上げ](アゲ・アゲ・アゲ・アゲ)
[#地から1字上げ](サボテン・ナイト・フィーバー)
[#地から1字上げ](ラクダでGO!――よみがえれGOTOキャンペーン月間)
先生、このまま行ったら、夏の東京オリンピックは玉砕です。観客を半分にしたり、最悪、無観客も想定したりすることが、果たして本当の意味での危機管理でしょうか。
諸君、皆の応援したい思いに、自分がコントロール出来る隙はない。
[#地から1字上げ](小平奈緒・スピードスケート)
[#地から1字上げ](読売新聞、2018年2月10日)
[#地から1字上げ](やきとり戦国時代――鳥田むら・ひるおび)
[#地から1字上げ](売られたケンカは買う――ホルモンユカちゃん・ひるおび)
[#地から1字上げ](西村大臣、ぼくらどうすればいいのですか――根室食堂・ひるおび)
サンデル では、どうぞ。マイクを渡します。
男性5 (激しい口調で)レイさんが言っているような、全員の合意を待つなんていうことは「絵に描いた餅」ですよ! そんなのは無理ですよ。やっぱりある程度、みんなで論議はしなくちゃいけないと思うんですよ。だけどね、やっぱりいろんな意見が出てくるんですから。津波に襲われたとしても、私はここに残ると言い張ってる人がいたんです。それでは結局、(集団移転して)高台にまとまっては行けない。百十何年のうちに三回津波が来ているんですよ。だからいちばん大切なことは、津波で絶対に人命を失わないことだ、ということを最大の目標に決めないと、全員の合意なんか待っていたら何もできませんよ。(一同拍手)
サンデル ありがとうございます。
[#地から1字上げ](これからの復興の話をしよう、二一三頁)
[#地から1字上げ](マイケル・サンデル、世界の人たちと正義の話をしよう、早川書房、2013年)
サンデル では、どなたか最後に、「それでも合意は重要だ」と反論できる人はいないでしょうか。復興はとにかく前に進めるべきだという強い意見を聞いた後でも、それでも、合意は大切だと思う人。なぜそこに大切な価値があると思うのか、答えてくれる人はいませんか?
男性7 私は現在、宮城県の北部にある南三陸町というところで被災者支援をしております。ご存知の通り、南三陸町はほとんど町が壊滅している状態です。ということは、復興はイコール、新しい町を作るということだと思っております。多くの町民は、自分の町は自分で作りたいと言って一生懸命に議論をしています。当然ながらいろいろ意見の差はあります。でも、私は彼らの意見や考え方を見ていると、コンセンサスというのは、全員が合意するというよりは、納得という言葉が合っているような気がします。
彼らは議論をしながら、自分の気持ちを整理し、納得するのを待っているのだと思います。そういうふうに考えた時に、今やっている新しい町を作る議論というのは、あまりにも短すぎると思っています。そういう時間を彼らに与える必要が私はあるような気がしています。(一同、大きな拍手)
[#地から1字上げ](これからの復興の話をしよう、二一四頁)
[#地から1字上げ](マイケル・サンデル、世界の人たちと正義の話をしよう、早川書房、2013年)
先生、投書が来ています。どうして自民党の政治家は、芸者の文科大臣も含めて、世界からの批判に対して森会長を最後まで擁護しないで見殺しにしたのか。それこそが、日本人に特有の聞き流す組織風土そのものではないか。はたして、森会長の人間としての尊厳や名誉は守られたのか。
諸君、森会長はお星さまになったんだ。
[#地から1字上げ](ホームにて)
[#地から1字上げ](世界のクロサワ・映画「醜聞(スキャンダル)」)